Formin’ adherens juctions

というZigmondによって書かれたNCBのNews&Views。

細胞が隣の細胞と接着する際にできるのがadeherens junctionと呼ばれる構造で、この形成にForminという分子が大事だという話。

元論文はNCBのJan. 2004にあるMamalian formin-1 participates in adherens junctions and polymerization of linear actin cables。Forminとは四肢形成不全マウス(手足ができない)で欠損している遺伝子産物。最近になってこの分子が細胞形態形成を担っており、アクチン重合活性を持っていることが明らかになっている。今回の細胞間接着形成に関する報告では、細胞間接着形成に必須の分子、α-カテニンという分子の結合タンパクを酵母two-hybrid法で探索したところFormin-1が取れてきたのでその機能解析を行っている。Fmnのcoiled-coil領域にα-カテニンとの結合領域が存在しており、細胞に強制発現させると接着形成が阻害されるということを示している。この接着形成にはFmnが細胞の縁にいることが大事で、Fmnのアクチン重合活性部位とα-カテニンのβ-カテニン結合領域を融合させた人工的な分子をα-カテニンを欠損しているマウスの細胞に発現させてやると本来なら形成されない接着が形成される。

In vitroでもFmnのFH1ドメイン、FH2ドメインでアクチン重合活性化を引き起こすことを証明しているが、興味深いのはcoiled-coil領域を加えるとそのアクチン重合活性化を阻害するらしい点。Fmnの近縁分子であるmDiaは自身が活性部位を阻害しており(autoregulation)、他の分子からのシグナルを受けた場合にその抑制機構が解除され、アクチン重合活性を持つようになる。となるとα-カテニンがFmnのcoiled-coil領域に結合してautoregulationを解除すると考えるのが無難だが、どうやらそうではないらしい。このautoregulationの解除機構、結合タンパクを同定するという課題が残っている。

で、News&ViewsでZigmondが指摘している点で、Arp2/3複合体による「枝分かれ」構造のアクチン繊維重合とFormin(とその類縁分子)による「直線的」構造のアクチン繊維重合化のメカニズムがうまく使い分けられているらしい。これは酵母でも分かっていたことで新しい話ではないですが、今回の論文で取り上げられている細胞の進展に伴う急速なアクチン重合→接着した後の細胞膜を裏打ちするアクチン繊維の重合という一連の流れの中でForminが大事であるということを見出したのは非常に重要な知見。この「受け渡し」の機構もまだまだ未解明。