CERT

とりあえずCERTのことに関してメモしておきたいと思います。

Nature誌(18/25, Dec. 2003)に掲載されたMolecular machinery for non-vesicular trafficking of ceramideという論文。国立感染症研究所のグループによって細胞内のスフィンゴ脂質の輸送経路に関与するCERTという分子の機能解析。細胞内で生合成されるスフィンゴ脂質はゴルジでまず前駆体が合成され、その後ERに輸送されてそこで最終的な合成が行われるのだが、ゴルジ→ER間を輸送する機構はこれまで不明であった。今回同定されたCERTにはPHドメイン(ゴルジに結合)、FFATドメイン(ERに結合)、STARTドメイン(スフィンゴ脂質に結合)と全てのcriteriaを満たす分子構造を持っている。

非常にスマートな仕事で、彼らはLyseninという毒素を用いた細胞アッセイ系でCERT遺伝子を単離している。この毒素はミミズが出すもので、ミミズが外界から刺激を受けたとき、つまり敵に攻撃された際に霧状に体内から放出されるもので、ヒトの皮膚に触れると痛みを伴う。このLyseninが細胞内のスフィンゴ脂質代謝系に作用することは分かっていたのですが、このLysenin耐性(つまりLyseninが効かない)細胞のLY-A細胞にヒト遺伝子を戻して、Lysenin感受性(Lyseninが効く)になるのはどの遺伝子を戻したときなのかを調べたところ、CERT遺伝子を導入するとLysenin感受性になり、元のLY-A細胞ではCERT遺伝子に変異が入っているためにLysenin耐性になっているということを見出した。

ちなみにNature Cell BiologyのJan. 2004号のNews&ViewsでLipid pickup and deliveryということでHowerd Riezman、Gerrit van Meerによって簡単なReviewが掲載されています。